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そこじゃない対決「資格持ってるだけじゃ……」vs「資格持ってないの?」の向こう側にあるエンジニアの絶対実力

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2015/11/30 10:00

 クラウドの登場と普及が、ITエンジニアにスキルに幅を持つことを求めています。従来からすれば「越境」の分野にまで知識を増やさなくては、自動化が進むIT業界において失職の恐れが出てきます。本連載では、ITエンジニアとして(あるいはITを積極利用して)生きていくみなさんに、これからのIT人材像を、IT資格の価値や使い方などと絡めてお伝えしていきます。今回は、「IT資格不要論」と「IT資格必須論」の意見対立から見る、実力アップの柱についてお話しします。

どんな人と一緒に仕事をしたいですか?

資格を取得してはしゃいでいると、大先輩から「資格を持っているだけじゃあねぇ……。仕事ができないと。」なんてイヤミを言われたことはないでしょうか。そんな先輩に限って、資格は全然持っていない……けれども色んな経験を持つ、いわゆるデキる人なので言い返せない(けどなんだかくやしい……)。

かといって、資格を何にも持っていないと「え? そんな資格も持っていないの? 基本じゃないの?」と2年上の先輩が小突いてくる(でも、例の大先輩にはそんな突っ込みは入れないのだ、これが)

……IT業界では(他の業界でも?)、こんな経験をしている人が少なからずいるのではないかと思います。

>>> IT資格は必要なのか不要なのか?! <<<

非常に難しい質問です。

では、視点を変えてみましょう。あなたがもし、誰か知らない技術者と一緒に仕事をすることになったら、どんな人と仕事をしたいでしょうか?

  1. 高度資格を大量に取得しているが経験は少ない人
  2. 資格は持たないが経験がある(とアピールしている)人

どちらも選びにくいですよね。では、次の3択では?

  1. 高度資格を大量に取得しているが経験は少ない人
  2. 資格は持たないが経験がある(とアピールしている)人
  3. 資格もあるし、経験もある人

確実にc.でしょう。でも、ちょっと待ってください。どうして「確実に」なのでしょう? そこがポイントです。

資格は経験を補う

どうして経験があっても、充分ではないのでしょうか? 経験と資格の違いは何なのでしょう?

それは「体系的で網羅的な知識」にあります。資格が証明しているのは、その人が体系的にまとめられた知識を網羅的に学習し、理解していることです。現場経験だけで、その分野についての体系的な知識を網羅的に得られることは滅多にありません(すべてを体験するにはかなりの年月がかかる場合がほとんどで、それを短期間で知識として伝えるために人間が創り出したのが文字であり、書籍であるわけです)。

経験がある人は、経験した分野においてそれが知識(血肉)となり、以降、同様の環境では、より効率的かつ効果的に結果を出すことでしょう。しかし、経験していない条件が加わったら? 知らない知識分野の場合に応用が利くかは未知であり、それがリスクとなります。リスクの高い人とは仕事をしたくないのは当然です。

逆に、資格だけ取得しているということは、知識はあるが、それを実際に使いこなした実績がないということを指します。つまり、頭でっかちで、現場では臨機応変にその知識を使えないという可能性があります。これもリスクです。

したがって、両方のリスクを打ち消し合っている選択肢c.が確実によい、と感じるのではないでしょうか。

European e-Competence Frameworkの「コンピテンス(Competences)」についての基本的な概念は、この考えをもう少しまとめたものとして参考になります。

“Competences is a demonstrated ability to apply knowledge, skills and attitudes to achieving observable results”

「目に見える結果を達成するにあたり、自分の知識とスキルと振る舞いを適用できることが証明された能力」

本質的には、「コンピテンスとは、知識を持ち、スキルがあり、プロフェッショナルな振る舞いで目的を達成してきた経験を示す能力」といえます。

コンピテンスとは
知識(knowledge)
対象の事柄を知っている、親しんでいる(~を知っている)。
スキル(skills)
対象の事柄の実施が可能な実力を持っている(~ができる)。
経験/振る舞い(attitudes)
持っている知識やスキルをプロフェッショナルな姿勢で推進し、活かすことができる。

ITエンジニアとして成功するための3つの必須要素

寿司職人は、店内で食べるお客様には、口に入れた瞬間にシャリがふわっとほぐれるくらいに柔らかく握り、出前用には、家に到着して食べる頃合いにちょうど良い具合になるように握っているとか。これを実践するには、力の入れ方や形の整え方だけでなく、シャリやネタに影響を与える季節の移り変わりと気温・湿度、水や出汁やネタの違いなど、幅広く豊富に知識を持っている必要があります[1]

でも、そうした知識があっても、実際に上手に握れるかどうかはわかりませんよね。それは下積み何年という中で、親方の背中を見つつ、練習を積んでスキルとして体得していくわけです。

下積みが終わったからといって、すぐにお店を開いても満員御礼とはいかないでしょう。寿司職人というだけでなく、寿司屋として成功するためには、寿司をうまく握れるだけでは足りません。さまざまなお店で、一定レベルの役割と責任を負った中で数年間の実績(=経験)を積む必要があります。その間には、後輩や部下の面倒を見、女将さんやお客様とも良い関係を保つといった、総合的な振る舞いも求められます。こうして寿司を握る以外の経験を積むことで、寿司屋として成功するための力がつくのです。

IT業界でも同じことがいえるのではないでしょうか。

知識
XXXの資格を持っている。
スキル
XXXの設計や構築/開発、設定、トラブルシューティングなどができる。
(※実技能力を試験で確認する資格もあります)
経験/振る舞い
XXXのSE/プログラマーとしてプロジェクト/運用に参画した。
現場をリードしながら、成功裏に完了し、多くの経験を組織に還元するとともに、後続のメンバー育成にも尽力した。

[1]: そのほかにも、寿司職人としては道具の揃え方、お客様との接客などの知識も必要でしょう。

今回の結論

それでは、今回の話のまとめです。

  • 資格は必要です。それは体系的で網羅的な知識があることを客観的に証明するためです。
  • その知識を実際に使えるスキルを持ち、証明すること(またはアピールすること)も大切です。
  • さらに、それら知識とスキルを活かして、プロフェッショナルとして必要な態度を持って行動し、経験したことを自分の言葉で説明できることまで揃ってはじめて、プロといえるでしょう。

特にグローバル化が加速し、日本国内の人口(IT人材)の激減が始まっている現在、自身のキャリアパスも考えると、資格という客観的な証明を持っておくことが無駄であるはずがありません。また、社内の昇進試験でも就職活動においても、資格(知識)だけでなく、スキル(実技能力)と経験を加えた3つの観点から論理的に説明することで、担当者により強くアピールできるでしょう。



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著者プロフィール

  • 最上 千佳子(モガミ チカコ)

    日本クイント株式会社 代表取締役社長。

    システムエンジニアとしてオープン系システムの提案、設計、構築、運用、利用者教育、社内教育など幅広く経験。顧客へのソリューション提供の中でITサービスマネジメントに目覚め、2008年ITサービスマネジメントやソーシングガバナンスなどの教育とコンサルティングを提供するオランダQuint社(Quint Wellington Redwood)の日本法人 日本クイント株式会社へ入社。ITIL認定講師として受講生・資格取得者を輩出。

    2012年3月、代表取締役に就任し、これまで以上にITとビジネスとの融合に貢献していくことを目指し、講師・コンサルタントとしての活動も続けている。

    [主要資格]ITIL Expert認定講師

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