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HTML5プロフェッショナル認定資格がIT技術者・非技術者を問わず就職・転職に効く理由と背景とは

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 登場から2年が過ぎ、業務システムの世界でも、HTML5の活用の場が急速に拡がりつつある。本稿では、HTML5に関する技術力と知識を認定する「HTML5プロフェッショナル認定資格」を運営するLPI-Japanでテクノロジ-・ディレクターを務める和田真輝氏に、業務システムにおけるHTML5の導入・活用状況や、HTML5プロフェッショナル認定資格の狙い、そして技術者のスキルアップ&キャリアパス設計における意義とメリットなどをうかがった。

なぜ、業務システム開発でHTML5の利用が急増しているのか

――2014年10月のW3Cによる勧告から2年が過ぎて、HTML5そのものは私たちの周りに普及してきた印象がありますが、肝心のそれを生かせる仕事というと、まだおぼろげなイメージしかありません。具体的には、どのようなものがあるのでしょうか。

和田真輝氏(以下、和田):HTML5はすでに多くの分野で利用されています。一般の方々からも注目を集めるキーワードでいうと、たとえば、WebバーチャルリアリティやハイブリッドWebゲームアプリなどの世界があります。そうした硬軟取りまぜた中で、いま堅い分野の代表格としてIT技術者の注目を集めているのがエンタープライズ分野、いわゆる業務システムの世界です。

 業務システムの開発でHTML5を使う企業には、大きく分けて3つのタイプが考えられます。

  • エンタープライズ向けのソフトウェアパッケージを開発・提供している企業
  • 自社およびグループ会社で利用する業務システムを自社開発している企業
  • 業務システムを受託開発している、いわゆるシステムインテグレータ
LPI-Japan テクノロジー・ディレクター 和田真輝(わだ まさき)氏
LPI-Japan テクノロジー・ディレクター 和田真輝(わだ まさき)氏
神戸商船大学で海洋電子機械工学課程を修了後、Oklahoma City UniversityでMaster of Science in Computer Science修了。2005年に通信キャリア系企業でOpenStackを利用したプライベートクラウドなどの開発・保守運用に携わる。2016年より、LPI-Japanのテクノロジー・ディレクターとして認定試験開発を担っている。

――なぜこれらの企業は、HTML5を使うようになったのでしょうか?

和田:Webベースの業務システムに、優れたユーザーエクスペリエンス(以下、UX)を組み込むためです。HTML5は、ユーザーが使いやすいインターフェイスを開発するのに長けています。そのため、業務システム開発においてもHTML5の採用が増えてきているのです。もちろん、優れたUXの必要性が高まる背景や、HTML5を使える技術的条件がそろったからこそ採用が増えているわけですが。その背景や事例を挙げると次の3つになります。

 1つ目は「業務端末においてモバイル対応のウェイトが大きくなってきている」という背景です。これまでクライアント端末は主にPCでしたが、現在はビジネスの現場にスマートフォンやタブレットといったモバイル端末が数多く導入されています。特にソフトウェアパッケージを提供している企業は、複数の顧客企業の様々なデバイスでも、そのソフトウェアパッケージを利用できるようにしなくてはなりません。そのため、マルチデバイス対応アプリをワンソースで記述できる「HTML5」が採用されています。

 2つ目は「自社およびグループ会社で利用している業務システムにHTML5を利用して構築する」という場合です。私の聞いた範囲では、従来のWebアプリでできなかったオフライン時の業務継続性を確保するために、2010年の開発当時、HTML5のApplicationCacheやLocalStorageといった機能を利用した例があります。

 3つ目は「業務システムを受託開発しているシステムインテグレータが画面対応パターン要件の増加、対応ブラウザ要件の増加といった顧客企業の要望を受けた結果、最適な解としてHTML5を採用する」例です。私の知っているシステムインテグレータは、HTML5利用がすでに必須であり、できないことは死活問題につながるということから、HTML5技術を持つ人材の育成に、非常に力を入れていらっしゃいます。

 そのほか、HTML5が業務システムでの利用を増やしてきたことと歩調を合わせるように、主にサーバーサイドにスキルや能力を注いできた多くの業務システム開発者が、クライアントサイドの技術であるHTML5を学んでいます。これは、HTML5の普及とニーズの高まりが起こした大きな変化の1つといえるでしょう。

HTML5プロフェッショナル認定試験の[Webサイト](http://html5exam.jp/)
HTML5プロフェッショナル認定試験のWebサイト

HTML5のスキルが有望なのは技術者も非技術者も同じ

――業務システム開発者がHTML5を学ぶメリットは何でしょうか。

和田:一番大きいのは「業務の幅の広がり」です。HTML5では、これまでサーバーサイドで行っていた処理をクライアントで行う機能も備えています。また、IoT(モノのインターネット)やVR(バーチャルリアリティ)、ゲームアプリといった領域まで手がけられるようになります。逆に言えば、これからはHTML5の習熟度が、IT技術者にとって大きな差別化要因となり得ます。

 たとえば、業務システム開発者を多数擁する、あるSI企業では、HTML5で業務Webシステムを開発するプラットフォームを提供しています。これは会社自らツールを提供して、クライアントサイドの開発を効率化するとともに、サーバーサイドが主体だった自社の技術者のスキルをクライアントサイドに広げているのだと思います。このほか、インフラ技術者にHTML5の学習を奨励している例もあります。

――業務システムの開発環境の変化なども影響しているのでしょうか。

和田:開発の短期化の影響はかなり大きいですね。1人あたりが手がける仕事の量も、非常に増えてきています。アジャイル開発となると、いちいち開発を外注していてはタイムロスが大きいし、意思疎通も難しい。そこでサーバーサイドが担当であっても、開発者が自分でクライアントサイドのユーザーインターフェイスまで作るようになっています。

 また、DevOps(デブオプス)に取り組む現場が広がっていることも大きく影響しています。ユーザーから届くフィードバックのうち、クライアントサイドに関するものでも、他の担当者に依頼するより自分でシステムに反映してしまうほうが効率が良いのです。こうした変化を肌で感じ、「HTML5を勉強しないと」というサーバーサイドの開発者がいま増えています。

――逆に、Webディレクターやプランナーといった技術者以外の人がHTML5を学ぶことで、ビジネススキルが広がる可能性はありますか。

和田:はい、Webディレクターやプランナーといった技術者以外の人がHTML5を学ぶことで、ビジネススキルが大きく広がると考えています。LPI-Japanでは3月1日に、HTML5プロフェッショナル認定資格(以下、HTML5認定資格)のVer2.0として、出題範囲改定を実施する予定です(資料PDF)。

 HTML5認定資格レベル1におけるバージョンアップには、「Webディレクターに新しいHTML5の知識を身につけてもらう」というねらいがあります。Web技術も、それらを利用する市場のニーズも急速に変化する中で、プロジェクト管理を担い、顧客との窓口となるディレクターも新しい知識を身につけなくてはなりません。そうして顧客に対して機能やサービスの具体的な提案を行えるとか、社内の技術陣に対して説得力のある提言やコミュニケーションを取れるようになっていただきたい。非技術者にとっても、HTML5はビジネスのスキルを大きく向上させる可能性があるのです。

 そもそも、LPI-JapanがHTML5認定試験を立ち上げたねらいは、サーバー、クライアントのどちらもできる人材を育てることにありました。Webに関してデザインだけ、HTMLコーディングだけ、サーバーサイドプログラミングだけというのではなく、両方を担当できるスキルを身につけた人材となることで、本人はもちろん、この人たちを採用する企業にも新たな価値がもたらされ、それが差別化や優位性につながります。

「サーバーサイドとクライアントサイドの間にあったスキルの境が曖昧になり、相互に人材の移動が起こっています」(和田氏)
「サーバーサイドとクライアントサイドの間にあったスキルの境が曖昧になり、相互に人材の移動が起こっています」(和田氏)

就職・転職に効くHTML5のスキルってどのくらい?

――HTML5に対する市場ニーズと学習意欲が共に高まっている状況は分かりましたが、実際のところ、システムのHTML5への移行はどれくらい進んでいるのでしょうか。

和田:2016年3月に受験者を対象に行ったアンケート調査の中で、「HTML5プロフェッショナル認定資格の取得に対する何らかのインセンティブがあるか」を尋ねたところ、7割以上の企業が「支援制度がある」と答えました(下図)。これはかなり高い数字です。実際の移行の割合は未確認ですが、企業側に「積極的な人材投資をしてでもHTML5に移行したい」という強い考えがあると言ってよいでしょう。

2016年3月末時点で所属企業が判明する受験者1187名を対象に調査。アンケート取得方法:テストセンターでの受験後アンケートをもとにLPI-Japanにて集計(出典:LPI-Japan [2016年5月16日付プレスリリース](http://html5exam.jp/news/press/page1702.html))
2016年3月末時点で所属企業が判明する受験者1187名を対象に調査。アンケート取得方法:テストセンターでの受験後アンケートをもとにLPI-Japanにて集計(出典:LPI-Japan 2016年5月16日付プレスリリース

――ということは、就職や転職を考える人にとって、より良い条件や選択肢を広げる上で、HTML5のスキルは大きなアドバンテージになりますね。

和田:そうですね。先ほども言いましたが、クライアントだけできる、サーバーだけできるではアピールが難しい。その点、クライアントとサーバー両方ができれば他者との間で明らかな優位性が築けます。

 また、就職採用時に、HTML5認定資格の取得者は書類審査を免除する会社もあります。これから就職しようとする学生や転職希望者には、就職活動の負担を減らす上で、HTML5認定資格は大いに役に立つでしょう。

――そうなるためには、HTML5認定資格に即していうと、どれくらいのスキルが必要ですか。

和田:まず目指すのは、静的Webコンテンツの作成スキルです。これはHTML5認定資格のレベル1で求められるスキルレベルで、Webサイトを始めさまざまな静的コンテンツを作成できる能力です。基本的にレベル1を取れば業務システム系のコンテンツ/インターフェイスは作れると思います。

 しかし、もっとリッチなインターフェイスを持つアプリや、マルチデバイスに対応した動的コンテンツ、端末のセンサー情報を取るなどネイティブアプリと同等の機能を備えたWebアプリを開発するとなると、HTML5認定資格レベル2に相当するスキルが必要になります。また、レベル2では試験範囲にJavaScriptが入ってきます。HTML5、CSSと合わせて、これら3つは必須のセットであり、もちろんHTML5認定資格では全てを包含しています。

 なお、レベル1でもJavaScriptは知識としては必要ですが、コーディングまでは要求されません。

技術者として日本国内に生き残るために

――企業で働く場合、HTML5認定資格を持っていることで、給与の差などはあるのでしょうか。

和田:これから資格を取ろうという方は、そうした「1時間あたり何円違う」といったことよりも、むしろその資格の学習で身につけた能力を足がかりに、時給換算で値段がつけられないようなスキルを身につけることが望ましいと思います。いわば、自分に対する「バリュープライシング」ですね。

 最近では、誰でもできる簡単な仕事がどんどん海外に流れています。クライアント/サーバーどちらもできるとか、デザインとプログラミングの両方の技術があるといった「合わせ技」で、独自のそれもクリエイティブな能力を発揮できないと、日本国内では技術者として生き残っていけません。そうした意味では、「エンタープライズのサーバーサイド技術者で、十分な知識も経験もあるけれどHTML5の技量が欠けている」という人にとって、今がまさにスキルアップのチャンスであり潮時ではないでしょうか。

――他に何か、HTML5と合わせて身につけておくと有利なスキルはありますか。

和田:HTML5はクライアントサイドの技術なので、「どちらもできる」技術者になる上では、やはりサーバーサイド技術であるLinuxなどのOSやデータベースも理解していると強いですね。

 というのも、サーバーとクライアントは当然のことながら連携して機能するからです。システム開発の現場で、そうした連携に関する問題などを他の技術者と話すときに、意思疎通がスムーズにできるレベルになっていると話が早いし、ミスやバグなどを予防できます。あと、クラウド関連の知識、技術も並行して取得しておくと、実務で役立つと思います。

資格更新のための継続学習がHTML5スキルを最新に保つ

――HTML5認定試験に向けた、学習の仕方やスケジュールの考え方を教えてください。

和田:まず自己学習の場合は、教材や教科書が複数の出版社から出ているので、それを購入して勉強するのが基本になります。より効果的に学習を進めたい場合は、LPI-Japanのアカデミック認定校があります。認定校はいずれもLPI-Japanが独自に定めた学習環境基準を満たしており、質の高いカリキュラムを効率よく学ぶことができます。

 ただし、学習を始める前に必ず理解していただきたいのは、資格取得がゴールではないということです。むしろ資格をスタートラインとして、資格取得のために学んだことを業務の現場で活かして顧客や会社に貢献できなくては、せっかく勉強した意味がありません。

 言い換えれば、認定資格とはこれまで学習した成果を可視化したものであり、それを自己のスキルの証明として企業にアピールする方法です。その可視化の手段として、HTML5認定試験を利用されることを願っています。

――そう考えると、認定資格を取得したらそこで安心してしまうのではなく、その後も業務での活用を念頭において、常に新しい知識や技術を吸収しながら、自分のスキルをアップデートしていく取り組みが欠かせませんね。

和田:一番いけないのは、認定資格を取ったらそこで安心して、勉強しなくなってしまうことです。

 HTML5認定資格は、認定を受けた日から5年以内に同レベルの再取得するか、上位レベルを取得することで、資格を継続できる決まりです。5年ごとに試験を受けて資格更新をするわけですが、Web技術の進化のスピードは非常に速く、この認定試験自体も新しい技術をどんどん採り入れています。つまり、5年ごとの認定資格試験を念頭に勉強を続けていくことが、自分のHTML5技術を最新に保つ秘訣であり、その達成度のチェックとしても試験を継続的に利用してほしいですね。また、資格更新のための学習では、ふだん自分の業務で使わない分野まで広く網羅して学べるので、得意/不得意分野を平均的に補っていけるという利点もあります。

LPI-Japan HTML5アカデミック認定校を紹介する和田氏。LPI-Japanが独自に定めた学習環境基準をクリアした教育機関で、HTML5認定資格の取得を目指す人に質の高い教育を提供する
LPI-Japan HTML5アカデミック認定校を紹介する和田氏。LPI-Japanが独自に定めた学習環境基準をクリアした教育機関で、HTML5認定資格の取得を目指す人に質の高い教育を提供する

――単に資格を取得するだけでなく、「認定試験のための学習」という枠組みの中で勉強を進めていくこと自体に、大きなスキルアップの効果があるのですね。

和田:そのとおりです。資格というはっきりとした目標に向けて、整備されたカリキュラム体系と教材で学んでいくことで、我流で取り組むよりも速く、より高いレベルに到達できるのです。加えて、初心者にとっては「網羅された範囲/整備された教材」、そして中堅の技術者にとっては「一流の技術者が編さんした最新の技術知識」と、各人のキャリアやステージに応じたメリットが享受できるのも大きな特徴です。

――最後に、資格取得を目指す皆さんに一言メッセージをお願いします。

和田:LPI-Japanとしては、日本の技術者がグローバルレベルでの競争力、付加価値を持つ人材となるように、育成面でできる限りの貢献をしていきたいと考えています。皆さんもHTML5認定資格を1つの足がかりとして、自分自身のスキル向上はもちろん、自分の会社や組織、そして日本社会の発展を支えていく技術者として、大きく成長していただきたいと思います。

ポイントを押さえて学べば合格率もぐーんとアップ!
「HTML5プロフェッショナル認定」学習のツボ

 これまでのHTML5認定資格の結果をもとに、受験者が間違いやすい出題項目や、効率よく実力を伸ばす認定教材の使い方などを、和田さんから教えていただいた。

正答率が低い傾向が見られる出題箇所は?
  • HTML5認定資格 レベル1:各種要素の知識に関連する項目
  • HTML5認定資格 レベル2:デバイスアクセス系APIに関連する項目
「LPI-Japan HTML5認定教材」を利用した効率的な学習方法は?
  • Web技術の変化に対応するために、出題範囲がアップデートされることがある。このため、教材は常に最新のものを利用することが必須だ。
  • やみくもに学習を始めるのではなく、必ず事前に出題範囲を確認すること。というのも、出題範囲の中には学習の助けとなるポイントが散りばめられているからだ。
  • 効率よくポイントを押さえて学習していきたいと考えるなら、教材の各章の最後にある確認問題をまず解いてみよう。自分の知らない、苦手な場所が分かるはずだ。そうやって自分の今のレベルを確認した上で、正答率の低かった章から始めれば、苦手な部分により多くの時間を割くことができる。
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著者プロフィール

  • 市古 明典(資格Zine編集長)(イチゴ アキノリ)

    うさぎ化してますが、1972年の子年生まれ。宝飾店の売り子、辞書専門編集プロダクションの編集者(兼MS Access担当)を経て、2000年に株式会社翔泳社に入社。月刊DBマガジン(休刊)、IT系技術書・資格学習書の編集を担当後、2014年4月より開発者向けWebメディア「CodeZine」の編集に参加。資格学習書と開発者向けWebメディア両方の経験を活かして、ITエンジニアのスキルアップを支援できればと思い「資格Zine」を立ち上げた。なお、9月から翌年2月まではNFL観戦のため、常時寝不足。

  • 工藤 淳(オフィスローグ)(クドウ アツシ)

    出版社や制作会社勤務の後、2003年にオフィスローグとして独立。もともと文系ながら、なぜか現在はICTビジネスライター/編集者として営業中。 得意分野はエンタープライズ系ソリューションの導入事例からタイアップなど広告系、書籍まで幅広く。

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